2017年8月31日

第55回 実相寺昭雄と『ウルトラQ』

 実相寺昭雄は1963年、すでにドラマのディレクターとしてデビューしていた。寺田農、杉浦直樹、古今亭志ん朝が主演のドラマ『でっかく生きろ』(音楽・冬木透)を演出して、野心的なセット設計と映像で話題を呼んだが、途中降板になってしまう。

 次に歌謡ショーの中継ディレクターとなり、技術部に注文して重いカメラをハンディーで持てるように改造。歌手に近づき、アオリで撮って中継するなどしたため、上司から「あまりやんちゃするなよ」と言われて、演出を外されていた。

 先輩で親分肌の円谷一ディレクターは、フランスとの合作テレビ映画『スパイ/平行線の世界』のアシスタント・ディレクターとして実相寺を使い、「いずれ円谷プロで拾ってやるから、まず『ウルトラQ』の脚本を書いてみろ」と発注した。

 出来上がってきた「キリがない」という脚本は、池や水道から不思議な不定形のモンスターが現れる不条理ストーリーで、中川晴之助監督作品の予定で台本も印刷され、準備が進みながら製作はされなかった。大和書房から1980年代末に出た『夜ごとの円盤』という、実相寺の自作脚本集で読むことができるが、中川演出で見てみたかった不条理モンスターだった。

 もう1本、人間の夢を食べる怪獣の出る「バクタル」という脚本も実相寺は考えるが、こちらは印刷台本にならず、形を変えて後に『ウルトラマンダイナ』で自ら監督してドラマ化した。『ウルトラマン』の打ち合わせの中で、夢と怪獣というアイデアを話して、それが脚本家・佐々木守にインスピレーションを与え、子供の夢と怪獣をからませた「恐怖の宇宙線」のガヴァドンが生まれたのかもしれない。

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