2017年8月28日

第53回 現存しているラゴン・ヘッド

 1980年代に高山良策さんのアトリエ・メイを訪ねると、壁にアボラスとゴモラ、ラゴンのヘッドが無雑作に掛けられていて、「これは?」と聞くと「ぬいぐるみを改造して別の怪獣を作るので、頭部だけ切っておいたのが、なぜか残っていたんだよ」との答え。

 ラゴンのボディは後に『ウルトラマン』のザラブ星人になっていて、カラーで登場した時にグリーンを強調するために再塗装したのか、ラテックスの端が溶けていたが、その目力と鼻から口へのモールドはラゴンそのもので、クチビルや口内の歯のモールドをじっくり見せてもらって、品格のある造形に唸ってしまった。

 高山さんは、ぬいぐるみのスーツ製作で武蔵野美術大学の学生を何人かアルバイトに雇っていて、そのアルバイト代に間違いのないよう詳細な日誌をつけ、スナップ写真も残している。この造形日誌の一部は雑誌『宇宙船』で、安井ひさしさんが高山さんの了解を得て『高山良策怪獣製作日記』のタイトルで再録・発表している。

 ラゴンは全身のモールドが凝ったもので、両脚の足先にかけてのウロコとも突起ともとれるモールドは、スナップ写真を見ると、フィルムに映っていないディテールに「ここまでこだわるのか!?」と驚いてしまう。

 高山さんに聞いた怪獣の肌の話。
「動物の肌というのは、昆虫もそうだけど、人間のようにワンパターンじゃなくて独特のモールド、形状がある。それをうまく出せると、生きた感じがするし、1体、1体の個性になると思って、毎回いろいろ考えて作業していたんだよ」

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