2017年8月1日

第26回 誰に向かって書いているか?

 『ウルトラQ』の取材で、24歳の時(1979年か)、国際放映のスタジオに『西遊記』(1978/NTV)の熊谷健プロデューサーを訪ねた。熊谷さんは円谷プロから国際放映に移籍して『西遊記』をヒットさせ、『西遊記Ⅱ』を準備中で〝『黄金バット』をやりたいなあ〟と次回作のアイデアを持たれていた。

 『ウルトラQ』の「悪魔ッ子」の原案者であり、製作担当として『ウルトラQ』全話に関わり、金城哲夫とは親友であった熊谷さんに、金城哲夫とどんなことを話し合っていたか聞いてみた。
「金城とはね、SFもいいんだけど、全国に伝わっている民話や伝説の中にSF的なストーリーがあって、そういうものをベースにした方が、純粋なSFよりも作りやすいんじゃないかと話していた。沖縄って、面白い伝説がいくつもあったんだ。『変身』も『悪魔ッ子』もその発想が原点だよね」

 「私も先輩の編集者に世界の伝説や神話を読んでおくんだと言われました。マンガ家にアイデアの相談をされた時、役に立つからって」と話すと、熊谷さんは戦前にもそういう全集が出版されているし、自分も何冊か持っていると教えてくれた。
 金城哲夫の脚本が好きなものだから、あのセリフ、このセリフと引用しながら「金城さんは素晴らしいですね」と30分くらい1人でまくし立てたので、熊谷さんはびっくりしていた。

 「君は本当に金城が好きなんだなあ……金城がそれを聞いたら何て言ったかなあ。(ニコリと笑って)でも、金城はもう亡くなって居ないから、君は天国に向かってラブレターを書くしかないな」
 心の中でハッとした。「そうか、天国の金城哲夫さんに向かって僕は文章を書いているのか。これはラブレターなのか!?
 その瞬間の思いは今でもはっきり憶えている。


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