2017年7月31日

第25回 怪獣ファンが語り合って見えるもの

 私が23歳の頃、18歳の怪獣ファンの友人、原口智生さんと話していて「バルンガ」の話になった。

 「台風のエネルギーを吸って、バルンガがダブラシのオーバーラップ映像でドクン、ドクンと大きくなっていく合成シーンが良かったよね」と私。すると原口さんが「あの時、停電した病院に一平が大怪我して入院している。由利ちゃんが〝死んじゃイヤよ、一平君〟と言うんだけど、ロウソクの揺れる炎のように一平の命も揺らいでいる。バルンガの台風も呑み込む生命力と一平の揺れている命。その対比がバルンガの生命力をさらに光らせているんですね」と言った。それは私が全く考えていなかった視点で「へーっ」と感心してしまった。

 熱心な怪獣と特撮映画の研究グループだった「怪獣倶楽部」の例会で、ゴジラ研究と円谷英二研究の竹内博、子供ヒーロー番組と怪獣造形研究の安井ひさし、東宝特撮とテレビ・ヒーロー物全体を追っていた金田益実、青春映画・アニメ・映画作家と守備範囲が広い中島紳介、富沢雅彦、英米のホラー映画・香港映画と映像の美少女、美人女優に詳しい徳木吉春、年間200本の映画を観ていて外国テレビドラマの研究もしていた岩井田雅行、写真撮影と模型雑誌に詳しい平田実、SFファンダム出身で円谷プロ、外国テレビが好きな私と揃っている中で、ある時、当時16歳だった原口さんがこう聞いた。

 「『ウルトラセブン』のハイドランジャーって、船体脇の吸排水口が84個と78個の2つのモデルがあって、どっちのモデルが先に作られたんでしょう?」
 「そんな物の数まで数えるか、普通」と一同はひっくり返ったが、まじめな顔で安井ひさしさんが言った。
 「原口君のその指摘はとても重要だ。ハイドランジャーのモデルを今、新しく作ろうとした時、その穴の数を決めておかないと作れないからね」

 年齢は関係ないんだ。要は作品を見つめている視線なんだと思った。
「特撮メカの研究は原口君に任せればいいな」と竹内さんが言うと、「これからはメカ口智生と名乗るといい」と安井さんがのんきに笑う。そして怪獣談義は果てしなく続いていく。


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