2017年7月11日

第5回 ひっくり返った「育てよ!カメ」

 幼い頃からテレビを見ていたので、『シャボン玉ホリデー』のように大人がちゃんと才能をかけて悪フザケじゃなく楽しんで作っている番組は、「いいな、このノリ」というのは判って、クレイジーキャッツやザ・ピーナッツのコントは歌以上に夢中になった。それはNHKの人形劇『チロリン村とクルミの木』の歌のシーンも同じで、春や夏の歌とピクニックなどの行事の歌(作曲・宇野誠一郎)の即興性、新しさ、楽しさにいつも感心していた。

 だから『ウルトラQ』の「育てよ!カメ」を見た時、作り手(脚本・山田正弘、監督・中川晴之助)の「今回は、いつもと違う物を見せてやるぞ!」という雰囲気はすぐに判って、主人公の太郎(主人公の少年の名前は劇中では本当に浦島太郎という、このノリ!)に付き合って、トンデモストーリーをしっかりと楽しんでしまった。

 カメが99センチに育って、竜宮城へとマッハ3で飛んで連れて行ってくれるのだが、着いてみると竜宮城はナーンニモナイ場所で、天井からスルスルとブランコが降りてきて、そこに座っている小さな女の子。なんと彼女が乙姫様だというのだ。泣きたくなる太郎の気持ちは判るじゃないか!

 スタッフに聞くと、この乙姫様役の女の子を笑わせるために、中川監督は上半身ハダカになって、お腹に顔を描き、おヘソに煙が出ているタバコをはさんで、お腹を揺らして踊ったりして、子供を疲れた表情にしないため、あらゆる手を使っていたという。

 『ウルトラQ』を見ていた子供たちは、初めてファンタジーのストーリーに触れたのだ。どこかシニカルなテイストがあって、大人になってから見返した時、まったく印象が変わった一編だった。


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