2017年7月23日

第17回 特撮映画をフル絵コンテ化した二人の監督

 日本の特撮映画の長い歴史の中で、映画のすべてのシーンを絵コンテ化して割ってみせたのは、二人の監督しかいない。しかも1965年(昭和40年)、東京と京都で同時に。
 一人は『ウルトラQ』の「ペギラが来た!」と「東京氷河期」の野長瀬三摩地監督。もう一人は、大映京都撮影所で『大魔神』と翌年『妖怪百物語』を撮った安田公義監督である。

 安田公義監督は、美術大学出の映画監督で、トレーシングペーパーに全カットを器用に絵コンテにして、全スタッフにそれを配って各パートの演出、設計に間違いのないようにした。こんな例は世界にもなくて、おそらく「ペギラが来た!」の方が先行して作業が行われていたようだ。

 ペギラの目がカッと見開く場面は、野長瀬監督のコンテにあって、その注文でデザインの成田亨、ぬいぐるみ造形の高山良策、目を動かすギミック(機電)担当の倉方茂雄が作り上げた。

 倉方さんは「ペギラの目は失敗でした。表面に塗装したら、まぶたがゴワゴワしてしまって、いくらワイヤーで引っ張っても目が閉じない。薄目を開いたままになってしまいました。カッと目を開くところで、本当はちゃんと目を閉じる予定だったのが、うまくいかなかったのです」と正直に証言してくれた。
 しかし、その薄目で光っているペギラの目が異常に怖い印象を作り出していたのだ。

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