2017年7月15日

第9回 特撮の粗編集を続ける円谷英二

 『ウルトラQ』に関する取材をしていて、合成をすべて手がけた中野稔技師の「『ウルトラQ』の特撮カットは、どれも円谷英二のオヤジが粗編集しているからね。面白いのは当然だよ」という話は、特撮班の演出助手だった大木淳(のち淳吉)、記録の宍倉徳子のお二人からも聞いた。

 毎回、特撮カットのラッシュ・フィルムが上がると、1本を円谷家へ届けに行く。すると、着物姿の円谷英二が「どれどれ」と庭にある円谷研究所の建物の中でムビオラ(編集機)を回し、指でフィルムを送って見ながら各話の特撮シーンを少しずつ完成させていく。若い特撮マンやキャメラマンは、特撮を活かす編集テクニックをまだ身につけていなかったので、それを教えるためだった。

 合成カットについて、円谷一監督が「いつもゴジラみたいな光線が多いから、ナメゴンの光線は精子がピピュッと飛んでいく。そんなイメージで行こう」と注文。「なんか汚い感じだなあ」と中野さんは言うが、それでオタマジャクシのような形の怪光線になったのだ。

 「動物園に行くと、トラやライオンなんて目ヤニやヨダレを垂らしてる。怪獣でも何かネットリした生物っぽさを出せないか」とさらに注文する円谷一監督。それでナメゴンの全身にグリースを塗って光らせたり、ゴローがミルクを飲もうとして口からこぼれたり、怪獣の生物らしい特徴をスタッフが付け加えていったのである。


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