2017年7月9日

第3回 みんなが震え上がった「悪魔ッ子」

 『ウルトラQ』でもっとも怖かったと、子供たちがクラスで言い合っていたのは「悪魔ッ子」であった。万城目、一平、由利子が一の谷博士を誘って見に行ったマジック・ショー。あどけないリリーという少女が父親の赤沼と舞台に出てきて、父親に催眠術をかけられ椅子の上で眠りこける。箱の蓋を閉めると、その箱の上にリリーが現れ、宙を歩き出す。拍手喝采の客席。

 宙を歩いたリリーは箱の上に戻り、そのまま消えてしまう。箱を開けると眠っているリリーがいて、父親の呪文で目を覚まし、無邪気に笑う。万城目たちは首を傾げ、しきりに感心するが、一の谷博士は一同にある実験を見せるという。

 研究所の箱の中で笑っている一平。「いいかね……人間の肉体と精神のシナプスを破壊すると……」椅子に座っている一平の横に現れるもう一人の一平。驚く万城目と由利子。「精神と肉体を分離することを続けていると危険だ」と博士。元に戻された一平はキョトンとしている。

 毎日、催眠術で寝かされていたリリーは、夜が更けると精神が分離して、白い幽霊のような姿となってさまよい、車の前に現れたりしたために事故が続出。現場から消えた人形や宝石は、リリーの宝の箱に入っていた。「お母さんに会いたい」と父に言うリリー。母親は亡くなっているのだが、赤沼は「お山にいるんだ」と嘘をつき、いつか会いにつれていってやると誤魔化し続けていた。

 ある夜、もう一人のリリーから「お母さんに会いに行こう」と言われ、出かけて行くリリー。線路を進む白い幽霊のリリーと本物のリリー。死への旅路なのかと小学6年生でも判った。リリーがあどけない分、この2人の合成シーンには震え上がった。怪物ではなく、小さな女の子の合成シーンに震え上がったのだ。

 誰でも肉体と精神のバランスが壊れた時、リリーのようになるのかもしれない。夕方、夢中になって遊んでいると、いつの間にか夜になっているように、自分を見失う体験は誰にでもあって、そんなこともあるかもしれないという子供心の想像力の中で「悪魔ッ子」には異様なリアリティーがあった。

 あどけない女の子が心底怖かった。ホラーとは何なのだろうかと、今でもふと考えてしまうのだ。

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