2017年7月27日

第21回 ペギラを演出し始める円谷英二

 「ペギラが来た!」の撮影が始まり、ドラマ部分はオールセットだから野長瀬監督の本編パートは順調に撮影が進んでいく。ところが、川上景司特技監督の特撮パートで問題が起き始める。ラッシュの仕上がりが悪く、OKカットがなかなか出てこないのだ。高野宏一キャメラマンも頭を抱えてしまった。

 トラブルが起きていることに気づいた円谷英二社長が「どうしたんだ? とりあえず上がっているラッシュを見せてごらん」と撮影済みのラッシュ・フィルムをすべて上映してみた。
「(試写室の明かりが点いて)ううん……高野、野長瀬君が描いた絵コンテを君も台本に写したろう、それを見せてみな」と円谷英二。高野キャメラマンが台本に転記したコンテを円谷社長に見せながらページをめくっていく。

 同席していた中野稔さんは回想する。
「ああ、これじゃダメだと円谷のオヤジさんが言ってさ。川上景司さんにこう言ったんだ。〝川上君、君は絵コンテの構図をなぞっているだけだ。ワンシーンの不気味な前兆、盛り上がっていくサスペンス、怪獣が近づいてくる時の人間側の恐怖を読み取って、それをフィルムに演出しなくちゃダメだろう〟。それで野長瀬監督がなかなかOKしないのかと思った」

「で、いろいろ話し合っていたけど、円谷のオヤジが〝よし、この後は僕がやろう。君は他の回の準備をしてくれ〟。そして『ペギラが来た!』の回はオヤジが陣頭指揮して特撮シーンを撮り始めたんだ。楽しそうだったよ」

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