2017年8月11日

第36回 悪夢からやってくるカネゴン

 『ウルトラQ』にとって、ガラモン以上に重要なのがカネゴンであった。

 「悪魔ッ子」がクラスで「怖い」「怖い」と子供が言い合ったのは前に書いたが、カネゴンの繭が金男の部屋の中央で糸を吹きながら浮いていて、「でっかくなった、でっかくなった、でっかくなったぞ!」と喜ぶ金男。その繭の割れ目からジャラジャラとこぼれるコイン。「キャハッ」とあふれるコインを手に、狂喜する金男。すると、何かに手を引っぱられて、繭の中に引きずり込まれる金男。いきなり壁が溶けて、アブストラクトな模様や地平線、アニメのラインが走り、悪夢のイメージの連続となる。

 この連続する特撮カットは、成田亨特撮美術監督が絵コンテを描き、アニメ処理を加えて、合成の中野稔技師が完成させた。そして、気味の悪いニワトリの声で、繭の割れ目からジャジャーンと現れるカネゴン……。

 山田正弘脚本、中川晴之助監督の優れている点は、まさに悪夢から生まれた怪獣にしているところで、一度でもお小遣いがもっと欲しいと思ったことがある少年には「自分もカネゴンになってしまうかもしれない」という思いを否定できない。

 理屈押しでないジェットコースターのようなストーリーで科学的根拠はゼロ。物語自体がシュールレアリズムで、正統派SFを鼻で笑う、どす黒いファンタジーであった。「カネゴンの繭」は怖かったと言えないくらい、怖いと感じた少年は多いのじゃないのか?

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