2017年8月25日

第50回 いつか撮りたかった南海の恋と冒険

 喜多見市の野長瀬三摩地邸でコーヒーをご馳走になりながら『ウルトラQ』の話を聞いていると、「南海の怒り」(脚本・金城哲夫)について意外な話になった。

「円谷プロの文芸部にいろいろな台本があったんだけど、その中でこれ(南海の怒り)を見つけてね。
 君たち若い人は知っているかな。1940〜50年代、アメリカの冒険映画に、南海を舞台にして漁師や水夫の青年が宝探しや遭難、悪人との攻防とか、現地の黒髪で褐色の若い娘と恋に落ちたり、サメやゴリラ、ワニと戦ったりする海洋アクションのジャンルがあったんだ」

「ドロシー・ラムーアという黒髪で脚がきれいな女優が有名でね。いつか、僕もそんなジャンルの映画を撮ってみたいと思っていたから、〝この台本でやってみよう〟と思ったんだ」 
 私は聞いていて「日本の映画監督なのに、南海の恋と大冒険か!? すごい発想の人だな」と思った。

「聞いてみると、大ダコの特撮が難しいという理由でNGになっていたんだって。それで『キングコング対ゴジラ』の大ダコの特撮シーンを借りて、特技監督の的場徹さんに大ダコの脚だけ新規に撮影してもらえればやれるよと言って、東宝の助監督時代から旧知の久保明さんに出てもらって、ヒロインに新人の高橋紀子さんを起用して進めたんだ。異色の『ウルトラQ』になったと思うよ」

「『キングコング対ゴジラ』のカットにつなげるため、移動車を組んで撮影したんだけど、その後、円谷プロに行ったら金城哲夫君が〝野長瀬さん、ついにやったそうですね〟って言うので〝何が?〟と聞いたら、〝大がかりな移動車を使ったそうじゃないですか〟と嬉しそうなんだ。みんなで〝黒澤組みたいな大がかりな撮影を、いつ野長瀬さんがやるんだろう〟と話してたんだって。オヤオヤと思って笑っちゃったよ」


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