2017年8月26日

第51回 等身大モンスターの面白さ、ラゴン

 「海底原人ラゴン」を見ていて新鮮だったのは、人間と同じ大きさの等身大モンスターでも作り方次第で面白いという事実だった。漁船の上で網を修繕している若者(黒沢年男)が悲鳴をあげ、次のカットで港の海面を、上半身だけ出して波を蹴立てて後ろ向きに進んでいく不気味さ。「助けてくれーっ」と叫んでいる映像にまずびっくりした。

 野長瀬三摩地監督に会った時、「あれはどうやって撮影したんですか?」と聞いたら監督はニヤリと笑って答えてくれなかった。おそらくアクアラングで水中に潜って、黒沢年男の脚を引っぱって泳いだのだろうと思うのだけれど、人間が怪物に水中に引き込まれる様を描いた映像の中でも別格だった。

 闇に包まれた村の中に、目を光らせ、静かに進んでいくラゴン。酔っぱらった村人が「こんなデカい奴、島にいたかな?」とつぶやくギャグと紙一重のサスペンスの見事さ。江幡高志というベテラン俳優の演技もうまいのだが、この闇夜に、両手を挙げて静かに獲物を求めるかのようにさまよう等身大モンスターの描写は、野長瀬作品の特徴で、後に『ウルトラセブン』のワイアール星人でさらにパワーアップして再登場する。

 触っただけで村人の家を壊してしまうラゴンのパワーの見せ方も独特で、野長瀬監督はこう解説してくれた。
「ラゴンは水圧の高い深海に住んでいるから、地上に出ると怪力の持ち主になり、あの崩れる家も屋台崩しの仕掛けを作って壊したんだよ」

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