2017年8月3日

第28回 死ぬのが見せ場の怪獣演技

 『ウルトラQ』は当時の少年にとって、あまり見たことのない特撮シーンが続出したTV番組だった。それは怪獣が退治されたり、死ぬシーンであった。

 東宝の怪獣映画では、ゴジラは撃退されても死ぬわけではないし、キングギドラも宇宙へ逃げていったり、地底怪獣バラゴンもフランケンシュタインに首を絞められ、グッタリとなったところを高く持ち上げられて、そのままいっしょに陥没した地中に沈んでいく最期で、はっきり「やられたーっ!」という感じではなかった(まだ初代ゴジラやラドン、バランは見ていなかった)。

 だから「甘い蜜の恐怖」で、巨大モグラのモングラーが自衛隊の戦車の猛攻撃から逃げるため、モグラの習性で地中深く潜っていき、マグマ層にぶつかって死んでしまうという金城哲夫脚本の鮮やかさは、見ていて感心した。

 「ゴメスを倒せ!」のゴメスは、ゴジラのぬいぐるみの改造怪獣であり、オーダーメイドで怪獣スーツが作られているため、東宝映画でゴジラを演じている中島春雄が中に入った。トンネル工事地区の地中から姿を現し、土砂を運ぶ貨車をひっくり返して暴れるが、天敵の怪鳥リトラのシトロネラ酸(アシッド)をかけられ、激痛に悶絶して倒れゴメスは死んでいく。

 中島春雄もあまり演じたことのない死に様を見せ、『七人の侍』で野武士の一人だった時代劇の経験が生きた怪獣演技だった。後に『ウルトラマン』のネロンガでも素晴らしい死に様の演技を見せている。


人気の投稿