2017年8月4日

第6回 SF初体験「宇宙からの贈りもの」

 円谷一監督は『ウルトラQ』に参加する予定ではあったが、金城哲夫の脚本を読んでシリーズ構成の相談に乗りながら、なかなか自分が監督するとは言い出さなかった。ところが、集まってきたシノプシスを見ていて「これは、俺が撮ろう」と言ったのが、小山内美江子が出した人間蒸発をからめた風刺物の「あけてくれ!」であった。

 「2本ワンセットで撮影するから、もう1本急いで書いてくれ」という円谷一監督の依頼で、「やっと一さんが監督してくれる」と張り切った金城が3日で書き上げたのが「宇宙からの贈りもの」だった。まだシリーズが『アンバランス』という仮題で呼ばれていた頃だが、金城哲夫オリジナルのアイデアである「宇宙からの贈りもの」は『ウルトラQ』の魂ともいうべき1作となる。

 宇宙怪獣という新たなコンセプト、真珠のような小さな金色の玉から巨大な卵へ、そしてその中から現れるナメクジ状の奇怪な宇宙生物。人間を化石化する怪光線を目から放射し、ナメクジのような姿なのに吠えるという怪獣タッチ。人間に襲いかかる凶暴性……すべてゴジラやラドンなどの東宝怪獣にはないエレメントばかりで、ウルトラ怪獣というのはこのナメゴン(ドラマの中では火星怪獣としか呼ばれない。この徹底した作品本位の姿勢は、円谷プロの中で70年代まで生き続ける)が開発したものだ。

 『ミステリーゾーン』のロッド・サーリングに憧れていた金城哲夫のSFタッチの構成、セリフの美しさ、対話シーンで盛り上がるドラマ……脚本家・金城哲夫の才能を感じさせる『ウルトラQ』のベスト・エピソードの一編である。

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