2017年7月7日

第1回 マンモスフラワーという出発点

 『ウルトラQ』は子供たちの間に怪獣ブームを生む原動力になったのだが、それはゴメスやペギラ、パゴスという恐竜タイプの怪獣だけではなく、怪獣というキャラクターにはさまざまなフォルム、能力、可能性があるというのを実感させたからじゃないかと思う。その典型となったのが制作第1話の「マンモスフラワー」だ。

 放送第4話だった「マンモスフラワー」を見た時、本来動かない植物が、そのうごめく根が人間を襲い、血を吸って育った球根がその上にあるビルを揺らし、ビルを突き抜けて、開いた花弁からは毒花粉をまいて「こんな花が東京中に拡がれば、東京は終わりだ」と子供心にも感じた。「花」とはまるでイメージが違ったからだ。

 当初『アンバランス』と名付けられていたこのシリーズは、梶田興治監督に聞いたところ「東京オリンピックで、日本は高度成長と浮かれまくっていたんだけど、そんなに全てがうまく行っているんだろうか? どこか、アンバランスな部分があるんじゃないか。それでオープニングのナレーションで言う、もし自然界のバランスが崩れたら……というコンセプトが出てきたんだ」と出発点を語ってくれた。

 万全な平和と安全があると思われる現実に、ピシッとヒビが入って崩れていくような恐怖、それが『ウルトラQ』のムードだった。そして、特撮がそこに使われた時、そのビジュアルが生むショックのインパクトのあること。まるでホウセンカのようにマンモスフラワーの花が「バンッ!」と開いた時、下で見上げていた都民の驚くカットのショック。あのカットこそ『ウルトラQ』を象徴する何かだと思うのである。

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