2017年7月10日

第4回 「鳥を見た」にあふれる詩情

 怪獣とはゴジラやラドンのように海の底や大地の中から出現するものだと思い込んでいた。ところが、「鳥を見た」の怪鳥ラルゲユウスは何百年も前の古代船といっしょに時を超えてやって来たという話(脚本・山田正弘)にびっくり仰天……そんな手があったのかという感じで、このストーリーにはシビれたの一語だった。

 しかも、物語は家出した少年と離れ小島で知り合ったクロー(苦労のダブル・ミーニングか?)という小鳥(実はラルゲユウスの変身した姿)との交情、友情を中心に映像スケッチされ、スタッフの話では「こっちのカットは千葉の海岸、こっちは三浦海岸とロケ場所が違って撮影に時間がかかった」という。

 少年がクローに水を飲ませるシーンもワンカットで撮影していて、どれくらいテイクを回しているか想像がつく。警官隊が集団で小鳥を追いかけ回し、ラグビーのタックルのように数人がかりで押さえつける演出も快調だった。

 警察署で鳥カゴに入れられているクロー。おびえる囚人の目線で鉄格子の中、どんどん大きくなっていく鳥の影。悲鳴。揺れる警察署の建物。ドドーンと天井を突き抜ける巨大な脚……小鳥はラルゲユウスの姿に戻り、警察署を内側から壊していく。この迫真の特撮カットは、円谷英二の設計で撮影されたものだった。

 ラルゲユウスは来た時と同じように、空の彼方へと旅立っていくのだが、TBSに表敬訪問に来た『黒いオルフェ』の監督が「鳥を見た」を見て、「この映画には詩情がある」と褒めてくれたと中川晴之助監督に聞いたことがある。


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