2017年8月18日

第43回 「1/8計画」の忘れられない思い出(その4)

 東京のどこにでもある、車がいっぱいで渋滞している街並み。その交差点の右側から突然現れる巨大な万城目と一平。実景に2人を合成した抜群のカットだ。そこへあわてて駆けつける警官。
「もしもし、あなた方はこの街に入ってはいけないんですよ」
ここで万城目たちが由利子を探しにS13地区にやってきたことがわかった。下にいる8分の1人間たちを踏まないように歩く足を合成で見せる。

 「由利ちゃーん!」と呼びながら、ミニチュアセットのビル街を進んでいく万城目と一平。万城目を演じた佐原健二さんを取材したら「あのビル街のシーンは、円谷一さんが演技指導していて、わざと少しスローモーション風に歩いてくれと演出してましたよ。ミニチュアのビル街の中でも由利ちゃんとの芝居ですから」との話。

 部屋で泣いていた由利子はたまらず窓から叫ぶ。
「淳ちゃーん、一平くーん!」その由利子を見つける一平。
「由利ちゃん、誰がこんなひどいことを。ちくしょう」
「由利ちゃん、帰って一の谷博士に相談するんだ」と、窓から手を差し入れる万城目。

 合成で由利子の目の前に突き出される手。ギョッとする由利子。自分はもう違う人間になってしまったんだという由利子の気持ちが、子供心にもちゃんと伝わった。これこそ『ウルトラQ』の合成だった。

 「帰って、帰ってちょうだい。私はこの街の住人になるわ。」泣き声まじりの桜井浩子の演技。このラブストーリーにも思える由利子の揺れるエモーションに、小学生だった私の心は千々に乱れてしまっていた。

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