2017年8月4日

第29回 成田亨デザイナーの悩み

 ペギラから始まった成田亨特撮美術監督のデザイナーとしての仕事はバルンガ、ピーター、ボスタング……と進んでいくのだが、自分で見ても怪獣として面白いと思えなかった。

 バルンガは倉方茂雄の作った揺れる触手と東京上空に浮かぶ合成の映像は良かったが、モンスター・デザインとして優れているとは言えない気がした。ピーターはある意味トカゲの域を出ていないし(そういう設定の脚本だった)、ボスタングに至ってはエイそのもので、プールでの撮影では水を吸ってどんどん重くなっていき、的場徹特技監督が海中から浮かび上がるシーンで非常に苦労して、結果的に手間のかかる操演怪獣になってしまった。

 後に成田亨は〈ウルトラ怪獣3原則〉という方針を立てるのだが、現実の動物をなぞらない。片目がなかったり、体が溶けていたり、子供に死を連想させる化け物にしない。怪獣は本来、力強く、美しい、生きるエネルギーにあふれているはずだ。カラー作品の『ウルトラマン』では、これに美しいカラーリングの個性を出そうという主張が加わる。

 ところが、いっこうに理想のウルトラ怪獣の実例が作れないのだ。その頃、的場徹特技監督がロケバスの窓から道路を見ていて、リヤカーで廃材の鉄屑を運んでいる廃品回収の男性を見つける。身長120センチくらいの小さな、筋肉隆々の男性だった。円谷プロに戻った頃、的場監督は「彼が怪獣のぬいぐるみに入ったら」と考え始めていた。

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