2017年8月16日

第41回 「1/8計画」の忘れられない思い出(その2)

 ベッドの上で目を覚ます由利子。胸にはナンバープレートが付いている。民生委員の人間が現れ、巨大なカメラを持ってくる看護婦。「あたしのカメラがなぜ、こんなに大きく……」と驚く由利子。「カメラじゃなくて、あなたが小さくなったのよ」と民生委員。

 その時、上の方から声がかかって見上げると……。
 巨大な人間が部屋の一角にある小さな箱の中を覗いている。そこは役所の一室で、隅に作られた8分の1人間の部屋だった。由利子は正式な手続きを経ないで、S13地区に入国したため、捜査員の手で留置されることになる。椅子の入った箱が下ろされ、由利子はその椅子に座って箱ごと留置場に運ばれる。

 留置場にいる太った男(悪事を働いたのではなく、身体が大きすぎて縮小装置に入れないので、大きな装置ができるのを待っているというのが笑える)が由利子の話を聞いて、腰のベルトを外して箱を窓から外の川に下ろし、逃がしてくれる。川の水が箱の中に入ってきて、あわてて椅子の上で身体をこごませる由利子と、細かな芝居が続いて驚かされた。

 そして子供たちが川を流れる箱を見つけて拾い上げ、「S13地区って何だろう?」と話していると、通りかかった2人のシスター。「まあ、これは1/8計画に関係しているに違いないわ」と気づき、箱を持ってタクシーに乗る。
 「S13地区へ」「違います、星川航空へ行って欲しいんです」箱の中からの声に、シスターたちは箱を開けて驚く。「まあ、可愛いらしい」箱の中の椅子に座っている由利子の合成シーン。「とっても会いたい人がいるんです」と由利子。

 このヒロインのひとりぼっち感はどうだ、と思った。いつも気の強い、活発な女の子である由利子の姿はなかった。ただ万城目に会いたいと願う女性がそこにいたのだ。

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