2017年8月30日

第54回 幻に終わった「オイルSOS」

 『ウルトラQ』には、『アンバランス』の仮題時代に書かれた「幽霊自動車」(作・村田武雄)のように映像化されなかったNG脚本があるのだが、ロケハンまでして中止になったのが「オイルSOS」(作・上原正三)だ。

 1975年頃、円谷プロで竹内博さんに脚本を見せてもらって、製油所から洩れたオイルの海洋汚染で変異したモンスターが製油所や街を襲う公害テーマの話で、1965年頃にこういう怪獣ストーリーを円谷プロは考えていたのかとびっくりしてしまった。
 製油所でロケーションするつもりが、洩れ出たオイルで汚染が起きる内容に、メーカー側が難色を示し、脚本家・上原正三のデビュー作になるはずがNG稿になってしまう。

 上原正三は、金城哲夫の1歳年上の沖縄生まれの青年で、金城に誘われ、円谷プロに出入りして、原稿の受け取りや催促を頼まれて作家や監督のもとに通っていた。野長瀬監督夫人は「金ちゃんとかウエゴンとか、主人はよく呼んでいましたね。皆さん、若かったんですよ」と、当時のことを教えてくれた。

 その上原の「化石の城」という脚本が改稿されて「ゴーガの像」になる。野長瀬監督の「007みたいなスパイ物のタッチを怪獣と組み合わせてみたい」という注文で生まれた、異色の暗黒街タッチのドラマで、的場徹特技監督の手数の多い特撮アクション作品として完成していく。

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