2017年9月1日

第56回 「ゴーガの像」の鮮やかな特撮

 「ゴーガの像」について話す野長瀬三摩地監督の顔は今も忘れられない。
「『ゴーガの像』はスパイ映画のタッチを出したくて、密輸団のアジトを描くのに、自動扉が閉まったら、手前で芝居を続けながら扉の向こうのセットを壊して、地下の美術品のコレクター・ルームのセットに組み直して、扉が開くとその部屋に出るという、部屋全体がエレベーターになっているという仕掛けを、ワンカットで見せようとやってみた」

 野長瀬監督は湯水のように「ゴーガの像」にビジュアル的なアイデアを注ぎ込んでいて、ジープに運転する万城目や一平を乗せて、バズーカ砲を持った自衛隊員が構えながらゴーガに近づいていく場面のかっこよさ。『ウルトラQ』のベスト級の合成のサスペンスだった。

 「怪獣と戦う人間の英知と勇気を見せたい」という野長瀬監督の主張は、「ペギラが来た!」「東京氷河期」「バルンガ」「ゴーガの像」「ガラモンの逆襲」と、どの作品でもちゃんとストーリーの中で一貫している。そして、科学者や自衛隊員以外の人間と対決させたいという狙いは、『ウルトラQ』ならではのSFマインドを見せてくれた。

 圧巻は、ゴーガの像をのぞき込んだギャングの部下(古谷敏)の顔面に、像の目から溶解光線が発射されて顔をなめ回し(古谷敏はバッチリ両目を開いている)「ウワーッ」と顔を押さえて絶命する合成シーンで、野長瀬監督のダークでハードな演出は、今の目で見てもショッキングな映像となった。

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