2017年9月4日

第59回 息をのむ傑作「2020年の挑戦」(その2)

 『ウルトラQ』の合成をすべて担当した中野稔さんは「2020年の挑戦」についてこう語ってくれた。
「飯島さんに、円谷のオヤジが東宝でやった『美女と液体人間』の液体人間のようなものを撮りませんか、もっとうまく見せられますよって言ってたんだ」

 飯島敏宏監督は内海正治キャメラマンのうまさを指摘する。
「僕は『月曜日の男』でも、車のシーンやアクションはロケーションで16ミリフィルムで撮影して、スタジオで撮ったドラマにインサートしていたんだけど、映画会社のキャメラマン助手の人が多くて物足りなかった。
 内海正治キャメラマンは、東宝で何作品も劇場映画のキャメラを回していて、プールの飛び込み台から飛び込んで途中で消えるカットも、2回同じ動きでキャメラを動かしてピタリと合っていた。〝さすがだ〟とびっくりした」

「ミルクを飲もうとした男が消えるのも、合成の中野稔がコップが素通しだとマズいのでミルクを入れて、コップを持つポーズもこの形でと撮影現場に立ち会っている。
 内海さんはあのカットでも普通と同じなんだ。頼もしかった。ゴーカートの女の子が消えるカットも、うまくいくかなと思っていた。電話ボックスの中の由利子に危機が迫るカットは、一平と電話させながら、本の表紙の写真の女と由利ちゃんをそっくりにして、ダブルサスペンスにしているんだ」

「上からケムール人の使う電送液体が降ってくる……あそこもうまくいった。あの液体の動きや合成もうまくて、消える時、ネガ状になるのは中野稔のアイデア。スーッと端から消えていくのも不気味で、オーバーラップにしなかったのが、ちょっと非情な感じが出て正解だった」

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