2017年9月5日

第60回 息をのむ傑作「2020年の挑戦」(その3)

 成田亨デザイナーはケムール人について、ガラモン、カネゴンと並んで「これこそウルトラ怪獣だ」と言い切っていた。
「ケムール人は、脚本に前後左右いつも見ることができる、前にも後ろにも目があると書いてあった。エジプトのピラミッドの壁画に描いてあるような、正面と横のポーズを1体にまとめたシンクロナイゼーションという絵の描き方があって、それを使って全体をまとめ上げた」

「全体に上に伸ばしてあって、7頭身の俳優の古谷敏さんが入ってくれて、ウェットスーツのボディが人間のシルエットを壊していて、これこそもう一つの人間の形だと思った。高山良策さんがボアみたいな毛を胸に付けたのも良かった。あれでどうやって物を掴むんだという細長い指もボディとマッチしていて、まさにウルトラが目指していた宇宙人ができたと思った」

 飯島敏宏監督が『ウルトラセブン』のガッツ星人について語ったのを聞いて、ハッとしたことがある。
「ガッツ星人は頭がでかいでしょ。僕は未来のかしこい宇宙人というと、つい頭が大きくなるだろうと思っちゃうんだ。本当はガッツ星人は頭が透明で、脳がゆらゆら揺れているのが見えるイメージで、それを美術の池谷仙克がピーコック模様で表現したんだ」

 ケムール人の頭の白い部分は、頭が大きくなりすぎて表皮が破れ、頭蓋骨が見えている裂け目なんじゃないか!? 目も内圧で飛び出しているのかも……と思えてしまったのだ。

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