2017年9月9日

第64回 怪獣パゴスのダイナミックさ

 「虹の卵」(作・山田正弘)を初めてTVで見た時、ウラニウムの球体容器を運ぶトラックが崖のところに差しかかり、崩れ始めた岩壁からパゴスが現れ、運転手が逃げていくシーンの合成のラインがあまりに自然で、いきなり怪獣が出現する導入部に目の覚めるような驚きがあった。

 あの特撮セットは、下からのアオリ映像を撮影するため、東宝美術センター(後の東宝ビルト)のステージの天井近くまで山と崖を作ってあって、崖下からカメラは出現してくるパゴスを撮影している。

 飯島敏宏監督は、パゴスを演じる中島春雄に挨拶するため、控え室を訪れた。
「中島春雄さんは控え室の大鏡の前で、四股を踏むみたいに足を片方ずつ上げて踏ん張って〝なんでも注文してよ。どんなことだって、やってやるから〟と笑って挨拶してくれて、オオーッと思ったよ」と飯島監督。

 パゴスは中島春雄用にオーダーメイドで作られた映画用のバラゴンのぬいぐるみスーツを改造した物で、高山良策が成田亨デザインを造形した頭部以外は、映画のままであった。最も動きやすいスーツだったバラゴンは、その後も『ウルトラマン』のネロンガ、ガボラとウルトラシリーズのストロング級の怪獣として、長く活躍していくことになる。

 全身を震わすスーツ自体の動きと、中島春雄の演技のオリジナルの動きがパゴスのキャラクターを結晶化させていた。

人気の投稿