2017年9月6日

第61回 息をのむ傑作「2020年の挑戦」(その4)

 ケムール人がパトカーの前を走っていく有名な合成シーンについて、撮影に立ち会った合成の中野稔さんはこう振り返る。
「あのシーンの背景は、スコッチバック・プロセスのオレンジのスクリーンで、ケムール人役の古谷敏さんに撮影の高野宏一キャメラマンが〝もっと左右に思い切り飛んで走ってくれ〟と指示を出しながら撮影していた。バックのパトカーの方も高野さんが撮っていたから、パトカーとケムール人の動きもちゃんと計算していて、合成もうまくいったと思う」

 飯島演出のすごいところは、柳谷寛が演じる刑事に出会ったケムール人が逃げていくシーンで、ケムール人に大股で異様な走り方をさせて奥へ走らせていることで、普通の歩き方・走り方ではないはずだというディレクターのこだわりが見える。後のバルタン星人やガッツ星人もそうだが、飯島監督にとって宇宙人というのは、歩くだけでも並みのヤツとは違うのだ。

 飯島監督は1979年頃、木下プロでケムール人を撮った時の思い出をこう話してくれた。
「万城目からケムール人に変身するシーンを考えていたら、万城目役の佐原健二さんが〝監督、僕、耳を動かせるんですよ〟と、耳をピクピクさせるのを見せてくれて、さっそくケムール人へ変身するシーンのきっかけに使わせてもらった。
 自衛官役の小林昭二さんは新劇出身の俳優さんで、セリフがはっきりしていて良かった。この時の印象で『ウルトラマン』のムラマツ隊長の役をお願いすることにした。笑顔も良くて、この回では彼に助けられたよね」

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