2017年10月6日

EX6 TVマンが見た映画人の演技

 「鳥を見た」の撮影現場で、中川晴之助監督は三脚の上に置かれたミッチェルの35ミリ撮影キャメラをじっくりと見ていた。芸術祭参加作品の長編TVフィルム『カルテス・カルロス 日本へ飛ぶ』(1963年)で文部大臣賞奨励賞を受賞していた中川監督だが、使ったのは16ミリ・フィルムで、技術的な興味から内海正治撮影監督にもいろいろな質問をしてみた。

 一の谷研究所の1シーンで、一の谷博士役の江川宇礼雄の演技を見ていて、何人かと映っているロングと単独のバストアップ、クローズアップで江川宇礼雄の演技と表情のつけ方が違うのに気づいたという。
 昼食の時、中川監督がそのことを聞いてみると、江川宇礼雄は笑いながら答えてくれた。

 映画は順撮りじゃない。カットごとに意味があって、戦前に自分の映画プロダクションを持っていた時、ロング、バストサイズ、クローズアップ、左右の横顔……と自分の演技を撮影して、このサイズではこうした方がいいとか、アップの時の目線の芝居はこうとか、サイズに合わせて工夫したことがあって「例えば志村喬さんなんか、うまいもんだ。TVの人はどうですか」と、逆に訊かれたというのだ。

 「走ってもらうと全力疾走だし、そのカットは使ってないけど熱演してくれて、映画で長年やってきた人の演技はさすがだと感心したんだ」と、中川監督は江川宇礼雄の思い出を語ってくれた。

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