2017年10月4日

EX4 江川宇礼雄とSFドラマ(その2)

 『誰か見ている』の脚本を書いた作家・北村小松は、戦前に海野十三のヒット作『火星兵団』に続いて「毎日小学生新聞」に連載した『火』という未来小説で、マッチ箱サイズで富士山を吹っ飛ばす原子爆弾を登場させた人で、戦後は少年向けや一般小説誌で空飛ぶ円盤の小説を量産した、航空関係に詳しい作家だった。

 前年、JOKR−TV(現在のTBS)の『猿飛佐助』というスタジオドラマで、マジック・シーンという画面分割の特殊技術を使用した特撮忍者物を演出した渋沢均ディレクターが『誰か見ている』も演出した。
 JOKR−TVは続いて、宇宙からの侵略ストーリー『遊星人M』(原作は『ゴジラ』の香山滋)、『惑星への招待』(原案・的場徹)という宇宙探検物のSFテレビを昭和33(1958)年まで連続して製作した。

 渋沢均ディレクターは『ウルトラQ』の前身『アンバランス』の初代プロデューサーで、一の谷博士役の江川宇礼雄に出演交渉を行ったのは製作担当の熊谷健だったが、渋沢ディレクターが江川宇礼雄とはTBSの番組でおなじみだったのでOKとなる。

 初期の脚本では、一の谷博士はミスター・アンバランスとして視聴者に語りかける、シリーズの中心人物だった。まさにミスター・SFドラマとして、江川宇礼雄は一の谷博士にキャスティングされたのである。


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