2017年10月23日

EX22 ドラマ・パートの美術マン

 『ウルトラQ』のドラマ・パート(本編)の美術セットを指揮していた清水喜代志美術監督は、東宝映画のベテラン美術マンで、1954年の井上梅次監督『結婚期』を皮切りに、東宝撮影所の美術部長も務めた北猛夫美術総監督の下で美術監督として、マキノ雅弘監督『人形佐七捕物帖 めくら狼』(1955)や中川信夫監督、青柳信雄監督の青春映画、恋愛映画、コメディーと年5、6本をこなしていく。

 『地球防衛軍』の併映作である『サザエさんの青春』(1957/監督・青柳信雄)の美術監督で、本多猪四郎監督の作品では『大怪獣バラン』(1958)『ガス人間㐧1号』(1960)『真紅の男』(1961)の美術を担当。怪獣物でも犯罪アクション物でも、セット設計のリアリスティックな味わいで本多演出を支え続けた。

 『バラン』『ガス人間』の現場で助監督だった梶田興治監督とは旧知の美術スタッフで、『ウルトラQ』では何でも相談し、注文できる間柄だった。また、松林宗恵監督と円谷英二特技監督の『潜水艦イー57降伏せず』(1959)でモノクロ映画のブルーバック合成を経験済みで、『ウルトラQ』のモノクロ合成にその知識を応用した。
 同じ松林監督、円谷特技監督の作品では、北猛夫美術総監督と共に大作だった『ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐』(1960)の美術セットも手がけていて、いかに実力があったかわかるだろう。
 
 人間が演じるドラマ・パートのスタッフが、ほとんどいなかった円谷プロの『ウルトラQ』の初期から、人材作りを含めてベテラン清水喜代志美術監督の存在と目配りが撮影現場の頼りであった。
 TVマンであるTBSのディレクターたちにとっても、映画の美術マンの構えの大きいセット作りは刺激に満ちたもので、ロケ撮影に工夫するTBSディレクターたちのリズム感がいい方向へ向かい、「ゴメスを倒せ!」「クモ男爵」「SOS富士山」「地底超特急西へ」と軽快なロケ撮影が効果をあげて、次第に画面のビジュアルが厚みを増していった。

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