2017年10月17日

EX16 TVフレームをはみ出るバルンガ

 SFイラストレーターの小松崎茂さんと話していて、「むかし戦艦大和に乗っていたという人の話を聞いたら、乗り込むのに小型艇で近づいていくと、もう、海の上に山があるみたいで、視界の中に入らないって言うんだよ。その大きさをどう描けばいいのかって、いつも考えたよ」と語っていた。
 それを聞きながら心の中で思っていたのは、『ウルトラQ』の風船怪獣バルンガのことだった。

 「バルンガ」の前半部は、警官2人が見上げる中、ビルの手前に浮かび上がっていったり、高圧線のそばに浮いていたり、TVフレームの中にいるのだが、後半になってくると、東京上空にどれだけの大きさになっているのか計測不能で(低く垂れ込める雲のように、下の東京は暗くならないイメージが見事だ)、いつも実景の東京の上をTVフレームからはみ出すように覆っていて、ミニチュアなのにまるでマットアートの背景画のように東京を圧している。こんな映像のモンスターは、世界でもバルンガだけだろう。

 だから、ラストの「バルンガは宇宙へ帰る」というセリフと共に、宇宙空間に作られた人工太陽を追って、光に向かって上昇していく中で、その全身が見えるのがショックなのだ。
 この計測不能の大きさを出した合成の中野稔技師のセンスは大変なものだと思うし、野長瀬三摩地監督の台本に描かれたラフな絵コンテでも、しっかりフレームからはみ出ているバルンガが描かれていた。胞子状から関東地方くらいの大きさまで、なんだかサイズの感覚が狂いそうで、まさに人間の感性を超えたモンスターなのだ。

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