2017年10月16日

EX15 巨大生物の特撮表現

 「甘い蜜の恐怖」の特撮シーンのスナップを見ていると、ゴジラやキングギドラをデザインした東宝特殊技術課の渡辺明美術監督が、セットの上で戦車の位置を直している写真があり、『ゴジラ』『ゴジラの逆襲』『空の大怪獣ラドン』と、スタンダード画面の怪獣映画を手がけた美術監督として、この回の特撮セットの設計をしているのがわかる。

 巨大モグラのモングラーが出現する場面は、地面がどんどん盛り上がってきて、『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』(1965/監督・本多猪四郎、特技監督・円谷英二)で地底怪獣バラゴンをセットの中に作った奈落の穴の下から台座ごと上に上げて、土を盛り上げながら出現するシステムに先駆けたもので、バラゴンよりもうまく地底怪獣の香りを画面に作り出していた。鼻息で地面の土を吹き飛ばす描写が生物っぽくて、東宝怪獣では見たことがなく、小学6年生には面白かった。

 怪獣倶楽部の竹内博さんと1976年に渡辺明邸にうかがった時、「特撮セットをリアルに見せるためには、山なら南の方角を決めて、北の方の木の枝を刈り込むんだ。山は陽の光が当たる南の方が木が育つからね」と話してくれ、「映画で造花を使うのが嫌で、必要な花を1ヶ月早く咲かせるために自宅に温室を作って、温度とライトをうまく使って咲かせたこともあるんだ」と言われて、科学的な視点と知識が自然を再現する特撮には必要なんだという話に、竹内さんと2人でびっくりしてしまった。

 「206便消滅す」や「甘い蜜の恐怖」の現場で、川上景司特技監督と『ハワイ・マレー沖海戦』以来に再会し、同年に東宝を定年退職した渡辺明美術監督は川上景司特技監督と組んで、日本特撮株式会社を設立。日活『大巨獣ガッパ』(渡辺明・原案)、松竹『宇宙大怪獣ギララ』、アメリカと合作した東映のSF映画『ガンマー第3号 宇宙大作戦』等の特撮映像を手がけることになる。

 「甘い蜜の恐怖」のモングラーの、いかにも巨大になった生物という、何の違和感もないナチュラルさ。電飾で光る目は、その中でも怪獣らしさを感じさせ(ペギラよりも目にライトを入れたのは早いのではないか?)、生物っぽい巨大怪獣というのもいいものである。

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