2017年10月3日

EX3 江川宇礼雄とSFドラマ(その1)

 『サンダーバード』のプラモデルの箱絵で知られるSFイラストレーター・小松崎茂さんの家で「こんなものが出てきたよ」と、ある名刺を見せられた。俳優の名刺だった。江川宇礼雄、と名前だけ書いてある。

 「これは?」と私が聞くと、小松崎さんは、
「江川さんの甥っ子が内弟子に入って、うちに下宿していた時、おじさんの江川さんがわざわざ挨拶に見えられて、〝甥をよろしくお願いします〟と言われて、なんたって戦前の二枚目スターで、うちの奥さんなんか〝ステキな方ねぇ〟と見つめて赤くなっちゃって(笑)。声も渋いし、立派な恰幅で、さすがだなあと恐縮したことがあったんだよ」
 と、名刺の由来を明かしてくれた。

 江川宇礼雄は、ドイツ人の血が4分の1入ったクォーターで、戦前の昭和13年、日活多摩川撮影所で日本SFの父、海野十三・原作のSFスパイ映画『東京要塞』の科学探偵・帆村壮六(シャーロック・ホームズがその名の由来)を演じて、工場の煙突に見せかけた大砲の砲身を粉砕する活躍を見せた。

 昭和31(1956)年には、JOKR—TV(現在のTBS)初のSFテレビドラマ『誰か見ている』(脚本・北村小松)で、空飛ぶ円盤にさらわれる主人公の科学者役を演じ、SFドラマに縁のある俳優であった。

人気の投稿