「206便消滅す」は、まさに『アンバランス』で作られた4次元空間に呑みこまれる超音速旅客機206便の台本(作・山浦弘靖)で、怪獣路線へ変更した『ウルトラQ』とタイトルが刷られた初めての台本(脚本・山浦弘靖、金城哲夫)だった。4次元ゾーンに棲む怪獣のアイデアを金城哲夫が加えたのだ。
合成担当の中野稔技師は、特撮シーンの画面から始まって、そこからズームバックしてくると、それを見ている人物がいるようなズーム合成をやってみたいと円谷英二社長に提案した。円谷社長は「そんなこと、出来っこない」と大反対。「なぜです?」と聞くと、「それができるなら、俺が東宝特撮でやってる」と言うのだ。
実は、あの渦に呑みこまれていく206便は、木製の小型モデルを電気洗濯機を回して作った渦の中に落として、半日撮影し続けていた特撮カットの中で一番感じのいいフィルムを使ったものだ。「800フィート以上回した」というスタッフの話に、「大丈夫か!?」と日記に書いていた円谷英二社長にとって、とりあえずカットが生きたことにホッとした気持ちもあったのだろう。