2017年10月13日

EX12 逆転する合成の構図

 「バルンガ」を見ていて「エッ」と思ったのは、一平(西條康彦)がセスナのエンジンのところにプカプカ浮いていたんだと持ち込んで、机の上に浮かんでいる小さなバルンガの映像の次のカットだ。
 画面中央に静かに上下しながら浮いているバルンガ。机の向こう側でそれを見ている万城目、由利子、一平。バルンガが移動マスク合成で浮いていて、後ろの人物たちのドラマ部分の映像の方が後景で丸ごと合成されている。この映像には子供心にびっくりした。

 合成担当の中野稔技師はこう語ってくれた。
「怪獣がいつも人物の向こう側に合成されている。何とか変えられないかと思っていて、高野宏一キャメラマンと〝やってみませんか?〟と考えたんだ。
 高野さんは東宝特殊技術課で撮影助手をやっていた時、荒木秀三郎キャメラマンに影響を受けたとよく言っていて、〝円谷英二と荒木秀三郎に師事した〟と言ってたからね。荒木さんは合成撮影の名手で『美女と液体人間』の人間を襲う液体人間が手前にいて、奥の美女に迫っていく場面なんてやってて、そう考えると円谷のオヤジさんもやってたんだ」

「飯島(敏宏)さんの『2020年の挑戦』のケムール人の頭が手前にあって、向こうに見下ろした感じで老刑事と警官隊がいる構図もそう。巨大怪獣で手前に合成したというのは、円谷プロが先じゃないかなあ。オヤジさん(円谷英二)が東宝でやっていない合成をやってみようよと、いつも高野さんと話してたからね」

人気の投稿