2017年10月10日

EX9 ナメゴンの演技でひと苦労

 機電というネーミングは、『ウルトラQ』で石井清四郎美術監督が、機械と電気関係の仕事という意味で倉方茂雄技師のために作った造語で、台本のスタッフ表に印刷された。特撮スタッフには「茂ちゃん」と呼ばれて、頼りにされた技術者だった。

 主人公・万城目の機動力となって活躍するセスナ機のミニチュアと操演システム、「あけてくれ!」の空中に浮かぶ都電やロマンス・カーの列車ミニチュア、「206便消滅す」の206便のデルタ翼の金属ミニチュアと木製の小型モデル……それは良かったのだが、人形工房が合成樹脂で製作した火星怪獣ナメゴンの発光する両眼の電飾を付けていたら、「怪獣は美術の範疇だから、中に入る演技もやってくれ」と川上景司特技監督が言いだし、倉方茂雄技師が操作して演技することになってしまった。

 倉方技師は語る。
「崖を突き破って出現するくらいまでは良かったですが、横に動くのはどうしたらいいか。やっては〝そうじゃない〟、動いては〝もっと全身を揺らして〟と試行錯誤の連続。〝ぎこちないくらいでいいんだ〟と言われましたが、自分では判りませんから、次は専門の役者を呼んで下さいと川上さんに必死にお願いして、お役御免になってホッとしました」

 ナメゴンの動きは、妙なアクションの連続で、宇宙生物の生態を感じさせた。演技ではない演技、高野宏一キャメラマンの構図やアングル、合成ラインの組み合わせも見応えがあった。海に落ちていく真上から見たショットも名カットだと思う。

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